川口無線試聴会
01/06/02 15:00〜16:30 「富士通テン ECRIPSE TD512試聴会」
川口無線は大阪・日本橋にあるオーディオショップです。大阪はどこも店が大きいのですが、こういった底面積が広く、しかもビルという店は東京ではまずありません。そしてこれも大阪の特長ですが、高額機器はガラスケースに入っていたりするんですよね。なぜなんでしょう。エアーD1もガラスケース内に鎮座しておりました。
で、その川口無線の試聴会に行ってきました。申し込みは電話かインターネットで行えますので簡単です。
試聴機は今話題の富士通テンのスピーカー「ECRIPSE TD512」(右写真)とパワーアンプ「A502」(左写真)です。これはタイムドメイン理論という時間領域に着目した考えを製品化した製品。つまり、振動が発生したときから消えゆくまでの音の波形の時間的推移を忠実に再現することで、限りなく原音再生しようというものです。試聴室はビルの3階で、試聴場所の広さは20畳くらいでしょうか。普段はウィルソン・オーディオのシステム6やクレルのアンプが置いてあるのでしょう。そうそう、タンノイの復刻版オートグラフもありました。
例によってギリギリに会場入りしたら、これが30名ほどの超満員。試聴場所は右スピーカーの真ん前1mという、交わりを聴くには最悪の、直接音を聴くには最高の場所となりました。<再生システム Esoteric P0s / dCS Elger Plus / ECRIPSE A502 / ECRIPSE 512>
スピーカー「512」は後壁からも横壁からも十分に離されてセッティングされています。そしてポジションはだいぶスピーカー間を開けた、ヘッドホンライク。後から聞けば、今日の人数が多いためとクロストークが少ないスピーカーのため、広めのセッティングの方が生きるから、とのこと。
詳しくは富士通テンのホームページを見ていただくとして、簡単にスピーカー「ECRIPSE 512」について触れておきましょう。
12cmフルレンジ一発の卵形スピーカーで、先にも書いたタイムドメイン理論を具現化したもの。ユニットは背面をグラウンドアンカーに固定(つまりユニットはエンクロージャーに直接固定されていない)し、フローティングされた状態になっており、そのエンクロージャーは共振や内部定在波、バッフル面の反射から逃れるラウンドフォルムが採用されています。
昨年のオーディオエキスポでも発表があったのですが、私はほとんど知らなかったんですよね。富士通テンなんてカーオーディオメーカーだから見もしなかったのです。一部雑誌では妙に評判の良いタイムドメイン理論のスピーカー、ちょっと気になるではないですか。
演者の選択した試聴曲は、ジャズとクラシック。というか、聴きに来ていた人達は中高年以上ばかり(冗談抜きで30半ばの私が一番下だったのではないかと思う)だったので、わざとポップス系を抜いたのでは、と推察しています。ECRIPSEシリーズはミュージシャン兼プロデューサーのブライアン・イーノをメインキャラクターに用いているくらいですから、パーカッションやバスドラムのようなリズム系の音を聴いてみたかったというのが正直なところ。(自分のCDを持っていかなかったのが失敗だった!)
何曲も聴いた中で、ジャズボーカルの2曲を取り上げましょう。初めて触れるCDについて細かく書いても仕方ありませんので。
最初は私の嫌いな カサンドラ・ウィルソンのニュー・ムーン・ドーター(右写真)から。
1mという近距離で聴く音は非常ににじまない、かつベースの低音をクッキリと刻むものでした。大きな部屋ですから、かなりの大音量再生だと思うのですが、うるささは全くありません。下が寂しいという印象もありません。かえって、シンバルなどもっと抜けきるような自然な再生があってもいいような気もします。音場は非常に広いんですよ、音質が、です。
スペック上は40Hz〜17KHz(-10dB)という再生周波数帯域ですが、聴感上のそれとあまり一致しないですね。確かに我が家でもDG28を使って再生周波数30Hz〜20KHzを完全にフラットにすると、高域がきつめで、低音過多に感じることが少なくありません。端で聴くとこうなのです。ではきちんとスピーカーの中央部で聴くとどうなるのでしょう。当然のことながら、スピーカー中央のポジションが生きるということなので、試聴客順々に真ん中の特別席に座っていきました。
二つの点で非常に驚きました。
一つ目はストレスなくスムーズに球面波が広がることです。非常に自然。特に天井方面にこれだけスムーズに音場が広がるスピーカーは珍しいとさえ思います。シングルコーンのメリットが最大限に生きている感じです。私もシングルコーンの長岡式スーパースワンを使っていましたが、こういった感じではなかったなあ。
もう一点は驚くべき定位のなさ^^。なんか雑誌で言われていることと正反対ですけど、カサンドラの濁声が座布団のごとく天井から振ってきます(これはこれですごいが。だいたいボーカルなんてユニット軸上に定位するもんだ)。最初は逆相かと思いましたよ。ただ、別のCDを聴けばそのような感じは受けないので、これはディスクそのものの特長のようです。演者の説明にもありましたが、512は「素を出す」スピーカーで、全てのCDを聴きやすくするスピーカーではないのでしょう。カサンドラのCDは言われているほどいいものではないようです(それを選ぶデモも少々不思議だ)。Jポップスの打ち込みものなんてどのように聴けるのでしょうか。興味深いところですし、いかに正確に再現すると言っても、こういったCDが聴けないのでは我が家では困りもの。
次はホリー・コールの「アイ・キャン・シー・クリアリィ・ナウ」です。一時オーディオのデモではどこでもかかっていました。
再び端に座り、ユニットを見つめてみましょう。デビッド・ピルチがベースを弾く度にユニットが前後に揺れます。ただ、音量の割にはその振幅は大きくないと感じました。私は振幅で音量や低域を稼ぎ出すスピーカーが好きではないので、これは好印象。
ホリーのにじみのない声にリップノイズやわずかな吐息がからみ、表情が見えるよう。開放感があり、さわやかな響きがいっぱいに広がります。そして、ここでもうるささは全く感じませんでした。だいぶ端折りますけど、概ね私は好印象。ただこの卵形デザインは許せても、オプションのスタンド(恐らくタオック製)とのデザインマッチングのなさは許せません。実際使用する人はほとんどがスタンド要となるはずなので、次作はスタンド込みのデザインで開発して欲しいものです。これでは余りにとってつけた印象が拭えないですもの。
512のジュニア機にも触れておきましょう。12Wステレオパワーアンプとスピーカーのペアで発売となる「508PA」です。値段はセットで10万円。エンクロージャの作りが512に比べて安っぽいのはちょっと残念。
ユニットが8cmと小口径化されていますが、タイムドメイン理論を生かすには小口径の方がいいはず。事実、私はこのセットのまとまった再生音に512と変わらない印象を持ちました。カタログから512と508の再生周波数帯域(-10dB)はそれぞれ40Hz〜17kHz、55Hz〜20kHzですから、上寄りになるなんて意見も会場から出ましたが、音量の問題はあるにせよ、512にサブウーハーを足すくらいなら、こちらのセットを買って将来に備える方が割安と思います。(最も、この音にマッチングするサブウーハーはあるのか、という気もしますが。)home /
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