afutura オーディオ訪問録 〜田中伊佐資さん〜

2003/12/14「5way」

 田中伊佐資さんは元ジャズ雑誌の編集者。現在は新進気鋭のライター。今のステレオ誌なんて伊佐資さんで保っているといっても反対意見はないはず。伊佐資さんの記事がなかったら、ワタシゃステレオ誌を買わないだろう。読むかもしれないけど、買わないと思う。スゴい事じゃないか。最大の賛辞。凄腕の文章。

 伊佐資さんとはどうやって知り合ったんだっけ? メグで合ったんだっけ? 誰かに紹介されたんだっけ? ああそうだ、 寺島ムック本の紹介を持ち込まれたんだ(やらなかったけど)。こちらから伊佐資さんに連絡を取ることはあり得ない(思いもしない)わけで、あぁ連絡してくださってありがと〜〜。afuturaを主催していなかったら巡り会わなかった縁ですな。

 で、伊佐資さん宅の話。今回はOyamaさんとともに訪れてきました。メールのやり取りの後、ご本人にを紹介してくれたのはOyamaさんだもの。雑誌のステイタスというのは思いの外高いから、執筆者のシステムを聴けるなんてワクワクするねえ。

田中伊佐資さん宅

 イメージっていうのは怖いもので、フツーの会社員の家が23区内土地付き一戸建てでかつ広大だと不自然じゃないですか。六本木の高層マンションに住んでいる会社員だって怪しくてしようがない。だから、失礼極まりないですが、職業:ライターの(しかもフリーだし)お宅が武蔵野の地主だとは思いませんでしたわ。Oyamaさん曰く、門をくぐってワタシはこうつぶやいたらしい。「これはどこぞの庄屋の家だな」。だって、

 玄   関 = Oyamaさんちと同じ広さ
 玄関ホール = O崎家総面積と同じ広さ

といっても過言でない。いや、30%くらいオーバーですが、例えとしては間違っていないと思います。

 リスニングルームは2階の約11畳のフローリング。Oyamaさんのリスニングルームの丁度倍の広さ。我が家とほぼ同じながら、うちはそこが食堂兼リビング兼寝室だからな〜。しかも伊佐資さんルームはほぼオーディオ機器しかないから、空間的には広く感じます。板張りの床、変形の天井、そこに鎮座する5Way。うらやましい。

伊佐資さん宅全景 システムはこちら。ステレオ誌にも書いてあるけど、アメリカン・ハイエンドの雄、ティールを使われていたこともあるらしいから、その何が気に入らなくて、こうなったかがわかるようですな。たぶん“ひっかかかり”がなかったんでしょう、“ひっかかかり”が。

  トランスポート:四十七研究所 ピットレーサー
  クロックコンバーター:インフラノイズ ABS-9999
  DAC/プリ:MSBテクノロジー DAC2プリアンプ
  パワーアンプ:FMアコースティックス FM611X

  ネットワーク:リニアテクノロジー N-405
  スーパーツイーター:JBL UT-045Be
  ツイーター:JBL 075
  ミッドハイ・ドライバー:JBL LE-85
  ミッド・ドライバー:ガウス HF-4000
  ホーン:ミッドハイ、ミッドともにオリジナル
  ウーハー:JBL 1500AL
  サブウーハー:リニアテクノロジー WS-122

 サブウーハー入れると6Wayか^^? というか、スピーカー紹介だけで8行を要する家はそうはないのでないかい。基本はJBLながら、それにガウスにリニアテクノロジーときたもんだ。5wayなんて昨今お目にかかったことない。伊佐資さん邸のスピーカーは無論既製品じゃないわけで、朧気な大本があって、それに強烈に手が加えられている。“600万ドルの男”(古い?)みたいなスピーカーシステムですな。

田中伊佐資さん宅 それにリアバッフルがオープンなんですよ。つまり5wayのユニットはどれも箱に入っていないのです。S9800用の最新ウーハーであるJBL 1500ALもまさかオープンで使われるとは思っていなかったに違いない。内蔵むき出しの“600万ドルの男”か・・・ちょっと怖いな。
 実際箱がないと(データ上の)低音再生は(正逆打ち消し合っちゃって)難しいわけで、リニアテクノロジーのサブウーハーとは125Hzという高い周波数でクロスしているらしい。

 ユニット以外の機器に関しては減らす方向で行きたいとのこと。だから使っているのはDACプリだし、アナログもない。それでいてクロックコンバーターを挟んでいるあたりは、試聴のできる立場ならではでしょうか。怪しすぎて効果を確認しないと買えないもん。
 大体5Wayくらいになると普通マルチアンプででまとめようとする人が多いと思うのに、(少なくとも今のところは)わざわざ超大型ネットワークを介し、全てのユニットをFM611X一発で駆動しています。マルチは仰々しいし、バカ高いFMアコースティックスに釣り合うアンプもないでしょう。

 最初の一曲目は「エリック・クラプトン/クロスロード2」から、一曲目「ウォーキング・ザ・クロスロード」。このCDは1970年代のライブツアーを収めた盤ですが、この曲はスタジオ録音&高音質。そういや、これもステレオ誌に紹介があったな。伊佐資さんというと寺島靖国さんと連んでいるイメージが強いせいか、どうしてもJazzの人っぽい。でも“最近は70-80年代のロックばかりでジャズ率は急下降”なんだと。

 実はこの一曲目、聴かせていただいて最初に感じたことは「レンジ広っ」。ワタシの場合レンジが広いと感じるには大体3パターンあって、(1) ホントに広帯域再生である、(2) 耳に付く高音域に微妙にピークある、(3) 音が動的で高音帯域が厚い(全体のバランスは崩れていても可)、のいずれかに属することが多く、割りとどれも高域次第。伊佐資さんシステムの場合はきっと(3)でしょうね。いや、S9800用のスーパーツイーター:JBL UT-045Beを16kHzでクロスさせているというのですから、(1)もそうに違いないけど、それよりもツイーター:JBL 075が強烈に効いているような気がします。案外このスピーカーシステムの要は「075」だったりしてね。

 この一曲を皮切りに後はワタシはロック&ポップスを、OyamaさんはJazzを聴きあさる、聴きあさる。

 Oyamaさんの感想
音の感じは、腰の座った低音をベースに音の塊がぶつかってくるようなイメージ。その上、ツイーター&スーパーツイーターでしっかり高域もカバーしているため、中高音もぜんぜん曇ることなく非常にシャープな印象があります。

 「炸裂好き」は私も伊佐資さんと一緒。ホーンだからか、音量が大きすぎずとも、とにかくエネルギーが突撃してきます。耳まで3mくらいですかね。「エネルギー感」というオーディオ用語は割と共通認識を持ちやすい単語だと思いますが、炸裂しながら、それが失せないの。ああ、うちもホーンのスーパーツイーターを足したくなってきた。

 私は以前afuturaで、O崎家の「炸裂」は「鬼太郎の毛針」のイメージと書きました。伊佐資さん宅の「炸裂」は「ギャンのニードルミサイル」みたいなもの。例えがガンプラ・ファン向け&マニアック過ぎますかね^^; でも真っ先に思い浮かんだイメージはコレだし、ギャンもスピーカーも量産機じゃないし、必殺技という点ではよろしいかと(爆:攻めないでくれ)。
 それにしても我が家とは重みが違う。鋭さはうちの方が圧勝だけど、そもそも「毛」と「重火器」じゃなあ・・・

ギャン
マ・クベ大佐の操縦するモビルスーツ「ギャン」。左手の丸い楯の「穴」から
一度にたくさんのミサイルが高速で飛び出します。写真は
バンダイHPより。

 ちなみにOyamaさんはこんな例えをしてくれました。

> で、田中邸の音の例えでもう一つでたのが、「巨人の星」で花形満が大リーグボール1号を
> 打つために粉砕用の鉄球を鉄バットで打つ特訓をしている場面の、その鉄球のような感じ。

 五十歩百歩ですな。もうどうしようもなく、例え下手な二人・・・

 重い高域のおかげで、SEがリアルに鳴り、そのおかげで音楽そのものがリアルに伝わる曲もあります。例えば「クイーン/ジャズ」から「バイシクル・レース」。クイーンの旨みが凝縮されたような一曲ですが、曲間に自転車のベルの連なりがあるんです。そのベルの音がリアルなの。生っぽいリアルじゃなくて、エッセンスを強調したリアルさ。濃縮の勝利。思わず伊佐資さんに「いいチリンチリンですね」と言ったら、「そうですね。いいチリンチリンですね」と返ってきました。近代JazzマニアのOyamaさんもこの70年代ロックには感じるものがあった様子。

> 正直、田中さん宅の音にケチをつける言葉がありませんでした。
> 恐れ入りました。

 Oyamaさん、相当誉めてましたもんね。「我が家が優れている点がひとつもない。大体ひとつくらいあるもんだけど」とか言ってた。
 私は家に帰ってから伊佐資さん宅で聴かせていただいた数曲を小音量ながら聞き直してみました。田中邸はオープンだから箱の音がない。とにかく自由に出てくる。前に出る音がお好きと言いながら、全体的に前に出てきているだけで、前後感の再現もそれなりに良好。

 ただ後面解放で、箱で音を打ち消すことがないためか、部屋のレゾナンスのせいなのか、曲によっては絡みつくようなだぶりがあり、音数が多すぎるような気はしました。あちらこちらで聴いているし、普段ヘッドホンでも確認している古内東子とか、やっぱり別なもの(そもそもディスクにない音)が混じっています。もっとも混じりというのは雑味ですが、それとて味のうち。伊佐資さんの音は味としてそうとう旨いと思いますわ。突き詰めたすまし汁よりも野趣あふれた浜汁が旨い、塩は精製塩よりも雑味のある伯方の塩の方が高い、豆腐の使うにがりだって塩化マグネシウムだけじゃダメなんだ。

 使われているアクセサリー類もバラエティに富んでます。ライターだと企画で家で試してから買えるからいいねえ。私ら店では試せても数種類以上を家に持ち込むことは難しい。人から借りる事はできても新製品を揃えることはできないもんね。

 音以外にもいろんなよもやま話も聞けたので楽しかったです。プロだからこそのネタもいろいろご存じ。面白かったですね。
 約5時間に渡る試聴は武蔵小金井駅前でインドカレーを食べて終了。あれこれ話しているうちにさらに2時間以上店に居座ってしまいました。


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