2001/09/15「久々に球アンプに触れる」
管球アンプユーザーの織物「北国」さん宅を訪問してきました。途中中断があったようですが、それでもオーディオ歴は35年。つまりは私が生まれる前からオーディオしてたってことです。各部屋にスピーカーがあり、それぞれがダック、セレッションの中型、JBLのLE8T、といったアンティークに近いものでした。それぞれを管球アンプで聴きましたが、それはそれは趣味の良い音。ダックで聴くスタンダード・ジャズ、セレッションで聴く80's ポップス、JBLで聴く北島三郎・・・。得意分野は異なるものの味わいがあります。
メインスピーカーは8畳の和室に置かれたアルテックの箱に入ったエレクトロボイス(以下EV、30cm 2発&ツイーター)という恐らく珍品。それを復刻ではないWE300Bを使ったEK製アンプとラックスマンのプリ、CDプレーヤーで鳴らしておられるのです。寺島靖国氏の言うところの「古代オーディオ」の範疇です。
セッティングは昨今のマニアから言えば、「全くなっていない」というものでしょう。オーディオ・アクセサリーの類は全く使われていないのです。スピーカーは畳に直置き、アンプとCD プレーヤーはスピーカーの上、ケーブルは付属品で、スピーカー間には大型のプロジェクションTVと仏壇(!)が置かれているのですから。
ただご当主、加熱するアクセサリー市場はご存じの様子。なんばの各オーディオ店にも頻繁に通われているとのことです。それでいて余りに高価なそれら商品をナンセンスとしているのですから、それはそれ、立派なポリシーです。お話をしていても、ご自身の目的とする「音が見えているな」、と感じます。(私にゃこれがない・・・)
暖まった300Bの奏でる音は、我が家とは全くの異質。ここにないものが我が家にあるのは確かですが、我が家にはない、そして欲しい感触がここにあるのです。
それは滔々(とうとう)と流れる音。波のように自然に押し寄せるというか、大河のように粛々と流れるというか・・・それからすると我が家は
定位がピンポイントで、奥行き感もあり、解像度が高く、音場情報が豊かで、高域も低域も非常にフラットに伸びていますが・・・どこかみみっちい。せせこましい。ちまちましている上に五月蠅い(正に漢字で書きたくなる印象だ)。
使っているのが小型スピーカーだから、とはあまり言いたくありません。でも、300B&EVのエッセンスを追加したい。隴を得て蜀を望むか!
EVで聴くビル・エバンスは時代なりの自然な音。AE2Signatureだけでなく、最近のハイエンドスピーカーで古い録音を聴くと、多かれ少なかれ干物を刺身にしたような感覚があります。それがない。ただし90年代のジャズを聴くと、鮮烈なドラムスが全く闇に埋もれてしまう。硬質なベースも生きてこない印象です。
難しいねえ。
「ケーブルで音が変わりますか」と聞かれました。奥様お手製のお好み焼きをいただいている最中だったので、「お好み焼きに鰹節をかけるか、アオノリをかけるか、そういう違いですよ」と答えました。オーディオの大先輩に対して正しい回答と自負していますが、どうでしょう。
2002/02/24「管球マニアに受け入れられるか?」
私は「管球王国」を買い続けています。そして以前は管球アンプユーザーでした。球アンプで鳴らす三宮ヴォイスのアルテックも大好きです。
が、今の我が家の音は管球アンプマニアやアルテックの音からは ほど遠いところに位置しています。
そんな我が家のシステム、コテコテの(各部屋のアンプが全て管球式)球マニアに受け入れられるんでしょうか。北国さんに「ご夫婦で」訪問を受けました。
軽い談笑の後、早速3名狭い6畳部屋へ移動です。試聴会でもそうですけど、大体どこに座るかで何を重視して聴くのかわかりますね。私は定位派ですから、できるだけ真ん中に(スピーカーから遠ざかっても)座ります。その方はスピーカー手前1mのところに腰を下ろしました。聴くときは音に集中して真摯に聴く方のようです。音楽が鳴り出すとしゃべりません。
全く受け入れてもらえないのかと思ったら、思ったよりも受けがよい。好評の原因は意外なことにパワーアンプ「V1x」でした。
「このアンプの前は何を使っていたんですか?」
「MA88(ラックスマンの球アンプ)ですけど。」
「う〜ん、うん・・・」
何を言われようとしたのかというと、「半導体アンプなのに管球アンプに一脈通じる音の出方がある」ということらしいです。別に球アンプを意識してAyreを選んだわけじゃないので、どこらへんがそういう判断基準なのかよく解りませんが、好評ならば私が口を挟むことでもないでしょう。「半導体アンプに小型スピーカを組み合わせるなら、これくらいつぎ込まないとダメだ。球ではこの手のスピーカーはなかなか上手く鳴らない。」とも言っておられました。「つぎ込む」というのは「金銭+パワー」のことです。パワー、というのは確かにそう思います。「解像度の良し悪しはやっぱりアンプで決まる。」とも言ってました。
「Ayreと管球アンプが似ている」と、どこかで読んだことがある・・・探してみると、実際はちょっと違って、ステレオサウンド誌141号の中で傅信幸氏が Ayre V5 を評してこんなことを書いていました。
「繊細感とパワー感とが絶妙にブレンドした音はただものではない。そしてミッドレンジの音の濃さ。エアーのアンプはいつもそうだが、真空管とのハイブリッドかと錯覚させられる。」
なるほど。ミッドレンジの音の濃さ+真空管にはない電気的パワー感、かな。
私が球の音を聴く機会がないように、球アンプユーザーは半導体アンプの音を聴く機会が乏しいとのこと。こういう鮮烈な世界があるとわかって大変な収穫、との感想を最後にもらいました。
でも球アンプの良さをきっと再認識されたんでしょう。帰りがけの無言の背中にそう書いてありました。