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Jack in the box

2004/01/24

 MITのACケーブルのことをAudio日記に書いたら、afuturaの技術系知恵袋であるNさんが電流位相実験(管球アンプ vs. Stellavox PW1 vs. Ayre V3)をしてくださいました。普段やり取りしているメールでいただいたのですが、死蔵させるには余りに惜しい内容ですので、ここにUPすることにしました。


 このところオーディオ考古学関係にどっぷり漬かっていたため、ハイエンドの話題にトロくなっているNです。
 昨夜のMITの件で、あまりいい加減な事を書いてもなんですから、まずKNICOMのHPでお勉強してみることにしました。ネット環境が劣悪なので英文のpdfファイルを取れず。無念なり。

(以下引用)

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【特許 Z-Circuit】
オーディオ機器のほとんどは電源トランスを搭載しています。発電機から見ると、
この電源トランスが負荷となります。電源トランスはコイル(インダクター)ですから
ここを通過する交流電流はその誘導リアクタンスにより位相が遅れてしまいます。
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 う〜ん、この辺ですでに赤ランプが点灯してしまいます。
 確かにトランスはインダクタンスを持ちますが、負荷としてコンデンサ・インプット型整流回路を背負うと、インダクタンス分による電流位相の遅れはかなり目立たなくなります。むしろ(一次側)平滑コンデンサへの進み位相をやっとこ打ち消すのが精一杯というところ。
 しかし波形率は極めて悪くなるので、古典的な力率計の指示は相当に狂います。これは仕事で電子機器の力率測定をやった経験からも言えます。
 ま、先行きましょう・・・

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各オーディオ機器を通過した交流電流は電圧と位相のズレた複雑な波形です。
発電機と電気製品の関係は自転車のフロント・ギアとリア・ギアのようなもの。
リアの負荷変動はフロントにも戻ってきます。自転車のギアに例えるとリア・ギアの
負荷変動によって往路と復路のチェーンのたるみ方が変わるのと似ています。
特にパワーアンプでは音楽信号により電源の交流電流波形が極めてダイナミックに変動します。
その複雑な電流変動によりAC100V電源ラインは汚染され他のオーディオ機器に
フィードバックして悪影響を与えてしまうのです。
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 どのあたりの時定数を言っているのかが不明ですが、通常は平滑回路のカットオフ<<電源周波数ですから、超低域のことだと解釈します。もし音声帯域のことを言うなら、電源周波数のリップル混入も無視できないことになります。

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「Z-Circuit」第1の特長は電源電流の位相遅れを補正して力率を改善します。
電力は電圧と電流の積ですが、電圧と電流の位相がズレているとエネルギー・ロスが生じます。
力率を改善することより、オーディオ機器に対して効率よく電力を供給することができます。
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 さて、問題の力率に到達しました。
 この種のアプローチは通常大電力機器を使う強電屋さんが行うことが多く、安定器(コイル)を含む蛍光灯を大量に使用するビルなどでは大きな問題になります。
 そしてこの場合の解決策として大容量のコンデンサをラインに並列にぶち込みます(実は余録としてラインノイズの低減が図れます)。しかし本当に力率は悪く、遅れ位相なのでしょうか? この実験は後ほど。

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自宅に発電機でも有していない限り、多くのコンセントや配電盤を備えた家庭でも
大元の発電機は結局ひとつです。このひとつの発電機に天文学的な数の電気製品が
接続されているのですから、そこに混入してくるノイズ・スペクトルは広範囲に
及んでしまいます。そのノイズがオーディオ製品の実質的なSN比を悪化させ、
音場の透明度を落としているのです。
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 ま、この部分は問題ありません。 実際に電源にスペアナ突っ込んで観測したこともあります。

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「Z-Circuit」第2の特長は、有害な高調波ノイズを吸収してオーディオ機器へ
流れる電源波形をピュアにします。これは電源周波数(50/60Hz)以外に対して、
本機が並列接続された導体(≒1Ω)となるからです。
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 おお、ここにヒントが!
 そうか、50〜60Hzの並列共振回路を作っているのかな? 可能なサイズから類推すると・・・1uF//10H〜10uF//1H あたりかなあ。

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つまり、高調波ノイズはオーディオ機器よりも抵抗値の低い本機を通過し、
オーディオ機器への侵入を防ぐのです。
(高調波ノイズは本機内部で熱エネルギーに変換されます。)
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 熱エネルギー云々はコアロスまたはコンデンサに直列に入れたスナバー抵抗を暗示していますね。

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「Z-Circuit」は電源ラインに対し並行に接続されます。つまり、発電所からの
圧倒的に強大な電力を直接機器に供給できるのです。コンセントの電流容量は安全のために
ブレーカーにより制限されてしまいますが、出力インピーダンスは相当低く、電源装置の
比ではありません。「Z-Circuit」は、大電力を消費するアンプに対応し、
長寿命で電力消費や発熱、騒音がゼロに等しく、軽量なのも大きな特長です。
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 あれま。またまた馬脚が・・・
 さっき「そこに混入してくるノイズ・スペクトルは広範囲に及んでしまいます」と言った以上は広範囲の周波数でのインピーダンスが低いかを吟味しないといけませんね。
まあ、常識的には数十〜数百Ωの下の方でしょうか。これくらいならAVRの方が低くできます。

 ・・・とまあ、技術的にはかなり「おいおい^^; 」的解説なのですが、なにせオーディオ。
 音が良くてナンボの世界です。ViceVersa。O崎さんが「良い」と言うぐらいだから良いに違いない!
 そのうち手持ち部品で実験してみようかしらん。もし仮に並列共振回路なら、チョークやキャパシタが鳴る可能性大です。

 さて、それでは本日の実験。

 果たして位相は遅れるのか?

 我が家には演算型の力率計もデジタルオシロもないので、取りあえず2ch.オシロを使い、波形観測をしてみました。電流は0.5Ωの抵抗ドロップで計りました。

 まことにお見苦しい写真1(真空管アンプ)を御覧ください。
 これは自作の3W×2chのシングルアンプの電源波形です。二つの波形を重ねているのですが、背の高い方が電圧(50V/div)、低い方が電流(1A/div)です。数十VAと言ったところですが、ヒータ(交流)電源があるため、後に出てくるトランジスタ・アンプよりゼロクロス付近から流れ始める電流が多いです。電圧のピーク付近で電流も増加していますが、これが高圧(B+)電源に対する充電電流です。あまり位相遅れがないと思います。

3W×2ch
写真1

 次のお見苦しい写真2(PW1@8W)は1kHzで8Wを出力中のステラボックスのパワーアンプの電源波形です。
 典型的なトランジスタアンプの例です。電流が電圧ピーク付近(90°、270°)だけ流れているのがわかります。これを電流の流通角と言いますが、おおよそ50〜60°でしょうか。それでも電圧ピークに対して遅れてはおりませんよね?

PW1@8W
写真2

 次は写真3(V3@ldle)ですが、これはへそ曲がりにもチョークインプット型整流を行っているAyreのアンプのスタンバイ時(それでも60Wも喰う)の波形です。これまでとはかなり違い、流通角は広く電流位相も60°ほど遅れています。
 しかし、平均化されたため、電流ピーク値は低く抑えられています。

V3@ldle
写真3

 次の写真4(V3@Job)は動作時で、近A級動作故、常時220Wの消費です。電流は直流重畳した正弦波状になっており、60°程度の位相遅れがあります。また、ゼロクロス付近のスイッチング電流がかなり多いのも特徴です。(これはこれで問題ですね>O崎さん)


写真4

<結論>
 通常のアンプでは電流位相の遅れは特別顕著ではなく、これが問題とは思えない。(これまで述べたとおり、結果的には再生音に関係しますが、直接的には位相遅れが力率悪化の要因ではなかろうと言うことです。再生音の善し悪しは所詮不完全な物の比較ですから、人によって問題にするポイントが異なり、(特に我々アマチュアはそのポイント数が少なく、都度変動する)評価が逆転しやすいことは周知の事実です。例えばトランスレスの直整流の方がトランス経由より音が速いと言う意見がありますが、我が家の実験では確認できませんでした。私の場合はむしろLの多用による音の滑らかさ、静けさの方に関心があるからでしょう。結論の部分では多分に私の好みを含む経験則が影響しています。)
 むしろ波形率の悪さが問題ではなかろうか。
 したがって、キャパシタを並列挿入するだけの位相補正回路では改善できず、むしろ共振回路のフライホイール効果による波形整形の方が期待できる。(結局のところ、車でいえば、排気系での共振効果利用によるエンジンのトルク特性の改善といった感じでしょうか。)
 但し電源の残留リアクタンス分による共振点のずれについては不明。

 まあ、こんなところです。
 少し専門的かも知れませんが取りあえずということで。


 それでは予備知識を補強するため、もう少し解説を・・・(さらに難解かな?)。

 家庭用の電源である交流50/60Hzは言うまでもなく正弦波で、学校で習ったとおり
 E=Em・sin(ωt) 
であらわされる信号です。

 これはオシロスコープで観測される時間領域では蛇がのたくったような例の波形、スペアナで観測される周波数領域では線スペクトル1本になります。即ち単一周波数のピュアな信号で、直流の次にきれいと言うことができるでしょう。この波形に(定)位相遅れが出た時は
 E=Em・sin(ωt+θ)
となり、時間軸上は後ろにずれた波形になりますが、オシロではリファレンス信号と比較しないかぎり同じ波形になり、スペアナ上も同一です。つまりそれ自体は汚れないと言えます。

 ところが山の頂上が潰れたり、麓が崩れたり、あるいは上下非対称になると上の式は多項式となり多くの高調波を含むことになります。スペアナで覗くと基本波の右側、つまり高い周波数領域に何本も線が出ます。この時の音を聴くと「濁った」音になるのですが、その不快度は偶数時・奇数時の比率及び高次高調波分布の微分係数変化によると言われています。

 さて、KNICOMのHP解説では電源の音質劣化の主要因を電流位相の遅れ=力率低下にあるように説明しているのですが、上に述べたように定位相遅れである限りはノイズ発生の原因にならないこと、さらに実験の結果からも顕著な位相遅れは観測されないことからこの解説の不適切性を指摘したわけです。
 またエネルギー伝達率の悪化を指摘していますが、これは電気代の増大ではなく、整流回路での電圧利用率の悪化(Eボルトの巻線のトランスから何ボルトの直流出力が取れるか)を意味しており、その代償としてフィルター効果の増大による整流後のノイズ分の低下と交流電源への影響の低下を得ています。
 ただし、これは電源トランスの実効インダクタンスが負荷に比べて充分大きい場合で、これは実験によって否定されたわけです。

 次にHP解説で混用されていた力率の悪化についてですが、力率は実効電力/皮相電力であらわされるファクターで、通常はモータなどの負荷による位相ずれが原因で悪化します。(やや昔の話し)

 しかし現代では整流回路による力率悪化が注目されています。私はこれを波形率の悪化と呼び換えたわけです。波形率の定義はこのサイトの通りです。
 要するに時間軸上にずれなくても、歪率が悪化すると力率は低下します。この状態では電源電圧波形は負荷電流に振られて歪み、整流/平滑回路を経てそのアンプに影響する他、近隣の装置の電源も汚すことになります。

 この解決策として、LC共振回路(タンク回路とも言う)による波形整形があります。
 LC並列共振回路は
 f=1/2π√L・C
で定義される単一周波数にのみ同調し、この時のLまたはC両端のインピーダンスは無限大(最大)になります。

 直流または無限大周波数ではゼロになるのですが、この間のカーブの鋭さはQと呼ばれるファクターで決まり、回路に直列並列に挿入される抵抗分の値で増減します。例えば並列に接続される負荷が重い時はなだらかなカーブになります。
 フライホイール効果とは定速度で回る車輪がその速度を維持しようとする慣性の働きでそれより遅いか早いかする運動を吸収する作用を言いますが、歪み波形を共振周波数の正弦波に整形しようとする作用も言います。

 電源の残留リアクタンス分云々と言うのは接続される電源や負荷にL成分やC成分があると、上記の式に影響して共振周波数がずれてしまうと言う意味。もっとも50/60Hz共用だから、そんなに鋭いポイントは狙っていないと思われます。
 それよりも共振回路に蓄えられるエネルギーは知れた物だから、強大なパワーアンプの電源にうち勝てるのか、はなはだ疑問ではあります。


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